五月の花は華やかな美しさで勝負!? ドラマティックな五月の花を探そう!

  「牡丹」の美しさはなんといっても、波打つように豊かな花びらが作る花の大きさでしょう。百花の王といわれるのもうなずけます。その派手やかな姿を舞台で見たことはありませんか。能楽や歌舞伎の演目『石橋』『連獅子』『鏡獅子』といった獅子ものといわれる作品です。

  獅子は百獣の王とされたライオンを元に考えられた想像上の動物です。これら獅子が現れる作品の舞台には必ず大輪の牡丹の花が飾られます。登場した獅子は、咲き誇る牡丹の香りに魅せられるように花と戯れ、獅子舞を舞います。ダイナミックで美しく華やかな世界がくり広げられ、どれも大変魅力的な作品です。

  なぜ獅子ものには牡丹の花が必要なの? と素朴な疑問がわきます。

  「獅子身中の虫」ということばを聞いたことがあることでしょう。獅子の身体にいる小さな虫が、自分を守って貰っている獅子の肉を食べ、ついには宿主である獅子を倒してしまう、というお話です。たとえ獅子のように強い力を持っていても、身内の中に裏切りがあれば身を滅ぼすこともありえる、という教えになっています。

  百獣の王といわれる獅子がもつ弱み、この虫から獅子を救ってくれるのが牡丹なのです。夜の空気に冷やされてしずくとなり牡丹の花に溜まった夜露、これこそ「獅子身中の虫」を抑える妙薬ということです。獅子が牡丹のそばを離れられない理由、ちょっと滑稽で教訓があってなかなか楽しいものではありませんか。古典として語り継がれる魅力はここにもありそうです。